◇動物の薬物検査とは

動物の薬物検査と言っても何のことがピンと来ない人も多いかもしれませんが、これは、動物由来の食品、つまり肉や魚、卵、牛乳などについて、それを生み出した動物に投与されていた薬物がその食品中に残留していないかどうかを調べるための検査です。

動物も私たち人間と同じくいろいろな病気にかかることがあり、その治療のために薬が投与されます。とくに、飼育下にある動物の場合は、野生の環境ではないことも大きな原因の一つとなって、より一層病気にかかりやすくなっていることがあります。飼育している動物が病気になってしまうと大幅に生産性が低下してしまうことは明らかですから、それを防ぐためににも薬は欠かせないものとなっています。

このような目的で投与される薬の大半はいわゆる抗生物質です。細菌感染症の治療薬です。

また、いわゆる病気とは少し異なりますが、動物から得られる食品について、それを消費する人間にとってより付加価値の高いものにするために薬が投与されることもあります。典型的な例が肉牛の肉質改善のために投与されるホルモン剤です。日本ではこのような目的ではホルモン剤は用いられていませんが、アメリカでは認められており、実際に投与されています。

これらの薬は、人間用のものと化学的には同じ成分であることもありますが、異なることもあります。そして、どれくらいの用量で、どれくらいの期間用いるのかといったことも一般的には人間用の薬とは異なっています。規制上も一般的な医薬品とは全く別扱いとなっており、動物用医薬品というカテゴリーに分類されています。

◇食の安全を保持するために

このような薬については、当然ながらある一定のレベルでその動物の筋肉、卵、乳などに移行することが予想され、これがすなわち残留薬物となります。このような残留薬物がそれを食べる人間にとってプラスにならないことは明らかでしょう。誰も、薬まみれの肉や魚、卵や牛乳などを食べたい、飲みたいとは思わないはずです。もとは薬なのだから仮にメリットがあったとしても別にデメリットなどないのではないかなどというのは浅はかな考えです。動物用の薬が人間にどんな悪影響をもたらすかは見当もつかないというのが正直なところです。

そのために動物の薬物検査というものが重要な役割を果たしているわけです。つまり、薬物検査によって食卓に上る動物性の食材を使った料理を安心して食べることができるようになっていると言えます。

◇長所は

メリットというのはおかしいのかもしれませんが、これは既に述べたことでカバーされていると言っても良いでしょう。このような薬物検査によって安心して食事ができるようになっているというのが最大のメリットです。これが無ければ、私たちは知らず知らずのうちに動物用の薬を摂取してしまっていることになります。これが人間にどんな影響を及ぼすかは全く想像もつきません。動物と人間とでは体の大きさも異なりますし、生理的な仕組みも異なります。動物に効く薬は、人間にとって思わぬ副作用をもたらすかもしれませんが、全く予想もしていないことなのですから何が起こるか分からないという、極めて不安の大きい状態で日常生活を送らなければならなくなってしまいます。

このような不安を取り除いてくれているのがこの薬物検査のメリットだということです。

◇短所は

問題点があるとすれば、これは何か簡単な検査によって人間にとって悪影響のある物質が含まれているかいないかを一発で判別できるようなスーパー検査ではないということです。そんな夢のような検査は存在しません。予め調べたい物質を特定しておいた上で、その物質がそこに含まれているかどうか、含まれているとすればどれくらの分量なのかを調べる、ごく当たり前の検査方法に過ぎないということです。

つまり、万能な検査ではありません。いくらこのような薬物検査をしても、そもそもそこに残留しているかもしれないと想像さえもしていない物質が判別できるわけではないのです。つまり、何か人間にとって悪影響のある、未知の物質が残留しているのを見落としてしまう可能性はあります。

そんなことを言っても、投与された薬は分かっているのだから問題ないはずではないのかと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。薬というのは動物の体内で様々に代謝され、変化します。その中には未知の物質もあるかもしれないのです。